カラスの巣

イベント参加録など

珈琲・俺を支えるインフラ

この記事は かふぇおれ Advent Calendar 2024 8日目の記事です。

adventar.org

はじめの前に

かふぇおれ Advent Calendar 2024 7日目は中田愛唯さんの記事…… の予定でした。 今年も今年とて遅刻ギリギリで記事を書いている私が言えたことではないんですが、記事執筆時点(12/8 21:00 JST)で5〜7日目の記事が存在しません。

かふぇおれ Advent Calendar 2024 初週のスクリーンショット。1〜4日目は投稿されており、5〜7日目は投稿されていない。
かふぇおれ Advent Calendar 2024 初週のスクリーンショット
かふぇおれ Advent Calendar 2024 は4日坊主に終わってしまうのか…… というところで、4日坊主に終わらせないためにこの記事を書いていきます。

自己紹介

Advent Calendarなので簡単に自己紹介です。 大体は2年間のAdvent Calendar記事からのコピペです。

ざっくりいうとネットワークが専門のインフラエンジニアです。

はじめに

今回のタイトルは珈琲・俺を支えるインフラです。 ところで、インフラとはなんなのでしょうか。 Wikipedia1によると、インフラとは↓のようなものらしいです。

インフラストラクチャー(英語: infrastructure)とは、「下支えするもの」「下部構造」を指す観念的な用語であり、以下の意味がある。

  1. 国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設。本項で詳述。
  2. 企業などの主幹となる設備を上記に例えた用語(組織の私有財産だが、組織内では公共施設のように振る舞う物)。
  3. 「下支えするもの」や「下部構造」を示す技術一般のこと(公共施設や私有財産を問わず。ITインフラストラクチャは技術一般の用語であり、所有者には言及していない。)。

今回扱うインフラは3、「下支えするもの」や「下部構造」を示す技術一般です。 さて、その「下部構造」を示す技術一般たるインフラにも色々なものがあります。 販売管理システムや連絡に使うチャットツール2などもある種のインフラと言えるでしょう。 多種あるインフラの中で今回取り上げるインフラは電力、珈琲・俺 店舗の電源です。 当然そこにあるものとして、普段あまり意識することのない電源について触れようと思います。

珈琲・俺 店舗の電源

珈琲・俺 店舗と湯沸かし

珈琲・俺をご存知ない方に説明すると、筑波大学の学生会的な組織たる全代会の構成員の一部がサークル的に活動している団体です。 珈琲・俺は毎年筑波大学の学園祭、雙峰祭にハンドドリップコーヒーの店を出店しており、今年開催された第50回雙峰祭では雙峰祭グランプリ最優秀賞を受賞するなど、高い評価をいただいています。

そんな珈琲・俺の雙峰祭店舗ですが、受注から提供までの流れでボトルネックとなりやすい箇所が2点あります。 1点目はコーヒーのドリップです。 1回のドリップにかかる時間はおおよそ決まっているので、どれだけ急いでも高速化には限度があります。 この点は、 珈琲員に人件費が発生しないのをいいことに ドリップする人数を増やすことで解決を図りました。 2点目は湯沸かしです。 コーヒーは熱湯を使って抽出する3ので、多くのコーヒーを提供しようとすると、大量の熱湯を必要とします。 では熱湯を生み出すにはどうするか、電気エネルギーや化学エネルギーを熱エネルギーに変換し、水に熱を加えます。 人類はいつだってお湯を沸かすことで文明を築いており、今も発電所ではお湯を沸かし続けています。 今年の雙峰祭店舗では電気ケトルを4つ使用して常にお湯を沸かし続けていました。

電源設計

閑話休題、電源の話に戻ります。 電気ケトルを4つ使用すると言うは易しですが、そんなに単純な話ではありません。 電気ケトルの消費エネルギーは、製品によって多少差があるものの、1台あたり1000W~1300W程度です。 実際に今回使用したケトルは1300Wのものが3つと1000Wのものが1つでした。 ところで、家庭用のコンセント、↓みたいな形のものは日本国内においては100V 15Aが定格で、1500Wまでしか流すことができません。 つまり、壁などのコンセントからケトル1台あたり1本ずつ配線する必要があります。

JPAC100V15A JPAC100V15AET

また、コンセントの各系統も多くは1系統あたり15Aか20Aが定格となっており、それを超えるとブレーカーにより電流が遮断されます。 このため、電源の各系統に接続可能なケトルは1台に限られます。 更には、部屋の各系統をまとめた部屋全体の定格電流というものも存在します。 この辺りは学実委からの資料では不足している情報があるので、自身で使用する部屋を下見に行き、室内のブレーカーから部屋全体や各系統の定格電流を、コンセントからその位置、系統を調査することになります。

このような制約がありながらケトルを4台、更には電子レンジやPCなども接続する必要があります。 特に、電子レンジは消費電力が最大1420Wと大きく4、ケトルがもう1台増えたのと大差ない状況でした5。 このため、使用する各機器の消費電力をまとめて、5つの系統に無理やり収めるための計算を行いました。 基本的には、各系統に電子レンジか電気ケトルを1つずつ接続し、比較的余裕のある系統にPCなどを接続するという方針で設計しました。 このような緻密な計算を綿密に、非計画的に、準備日当日に実施しました6。 そして、計算した結果を基に、配線図を作成します。 配線図の作成には draw.io を使用しました。 保安上の理由などにより、具体的な電気系統図を公開すると大学に怒られそうなので、配線図の一部を切り抜いた画像を添付します。

配線図の一部

配線

設計が終われば何をするか、実装 配線です。 しかし、上記の配線図からもわかるように長距離の配線が必要になります。 このため、電源ドラムだったり電工ドラムだったりコードリールだったりが一般名称の通称電ドラを引き回していきます。

室内では2系統で30mの電ドラを1つずつ使用しました。 これらは殆ど余丁がなかったので、ちょうどコンセントから30mくらいだったようです7。 今回は学実委から指示された受電箇所の1つが、店舗から1階階段を下り、廊下の端から端まで移動した先にあるコンセントだったので、30m電ドラ1つと50m電ドラ1つを延長した計80mの接続なども行いました。 当然廊下を這わせることになるので、コードの上に段ボールを重ねるなどして養生しました。 こちらは余丁が5m程あったので、余丁を折り返して壁際に寄せておきました。 発火の原因となるので何を間違ってもコードを巻いたまま使わないようにしましょう。

通路を跨ぐコードにダンボールを被せて養生している様子 その1
通路を跨ぐコードにダンボールを被せて養生している様子 その2

つまり、合計135m程電ドラを引き回したことになります。 学園祭の喫茶店とは思えないレベルの設備です。

配線作業中に後ろから「おい最終オペ連8始めるからさっさと電源用意しろ!」などの怒声が飛び交う9など、時間に余裕がない状況での作業だったということもあり、残念ながら作業中の写真はあまり残っていません。 コンセントの接続部も抜けづらいように養生したりしていたので、画像が残っていればよかったのですが……

運用

設計と実装 配線が終われば何をするか、運用です。

実際に一連の機器を店舗で稼働させ始めました。 トラブルを愛しトラブルに愛されたICTSC運営の性なのか、廊下から引き回した系統が不安定で、ミルの出力が明らかに下がったり電気ケトルが上手く動作しないなどのトラブルにも見舞われました。 この系統は廊下から引いているということもあり、他の部屋の影響を受けるなどして電圧降下が起こったのかなぁ、と想定していますが、私が電圧チェッカーを紛失したため測定できませんでした。 とはいえ、気合を入れて設計した甲斐あり、ブレーカーを落とすなどの事故はなく店舗オペレーションを終えることができました。

おわりに

以上、ご清覧ありがとうございました。 予定では電源の話の他に全代会室のネットワークの話も書く予定だったのですが、あまりにも長くなってしまったので今回は電源の話だけにしました。

当然そこに ある ものとして、あまり意識することのない電源について触れましたが、いかがだったでしょうか。 店舗でいうなら、華はコーヒーのドリップで、湯沸かし自体が裏方、その湯沸かしのための基盤ともなれば裏の裏というレベルです。 技術としても、レジシステムのように人目に触れるものではない、誰も意識せず評価もされづらい泥臭い役柄です。 インフラが意識されるのは障害が発生したときが主なので、誰にも意識されないことは、寧ろ安定稼働していていいことなのかもしれません。 ただ、その あって当然 のものにも構築などを担う人間がいて、誰も意識しないような作業の上に、様々なものが成り立っていることを頭の片隅に留め置いてもらえると、インフラエンジニアの端くれとしては非常に嬉しいです。

最後に、電源の引き回しや電源養生などを担当してくれた、ちゃんぐー、Astalum、その他コードの養生や電ドラの受け取りなどに協力してくれた各位、ご協力ありがとうございました。 また、店舗設計や出店にかかる諸々の事務を請け負った22生各位、店舗という場を整えていただきありがとうございました。

おわりの後に

以上、かふぇおれ Advent Calendar 2024 8日目の記事でした。 9日目はぶちぶちさんの記事…… らしいですが、どうやらconfidentialで限定公開される記事のようです。 国家機密とはどのような内容なのか楽しみです。


  1. インフラストラクチャー - Wikipedia
  2. かふぇおれ Advent Calendar 2024 1日目の記事で紹介されています。 珈琲・俺を支える技術 〜模擬店に内製POSシステムを導入する〜
  3. 100度が好ましいというわけではないのですが、本題から逸れるのでその辺りの話は割愛します。
  4. オーブンレンジの電子レンジ機能が消費電力1420Wと記載されていたものの、恐らくそれは自動モードの出力900Wについての言及と思う。今回は手動モードの出力500Wを使用していたので、恐らく消費電力は1000Wくらいだと思う。たぶん。
  5. マジで電子レンジ含めて設計するのは厳しかった。電子レンジを使うと聞いたときに正直「正気か?」と思った。
  6. 学実委への事前申請時に計算はしていますが、案内された位置にコンセントが存在しないなどの諸々があり、当日計算することになりました。
  7. 誰も事前に計算していなかったため、ギリギリ届かないオチもあり得たらしい。とても怖い。
  8. たぶん店舗オペレーション練習の略。実際の店舗での注文から提供までの流れを模して一連の練習を行う。
  9. 流石に誇張表現ですが、時間に余裕がなかったのは事実。